ボサノバとジャズとお酒の日々



「ゲッツ&ジルベルト」
初めてジョアン・ジルベルトとアントニオ・カルロス・ジョビンを聞いたのは、小5の時だ。
「ゲッツ&ジルベルト」という名前のアルバムの「イパネマの娘」という曲は、何と言うか、
夏に相応しい颯爽としたかっこいい、大人の世界を感じさせてくれたのだ。
アストラッド・ジルベルトとジョアン・ジルベルトの歌声にスタン・ゲッツのテナーサックスが
絶妙の節回しでからんだこのアルバムは、世界中で大ヒットした名アルバムだと知ったのは、
かなり後になってからだが、私はこれ以来ボサノバファンになってしまった。
南の国の世界(パラダイス)への憧れが、聞いていると頭の中に膨らんできて、嫌な現実を
一時忘れさせてくれる清涼剤のようなものが、ボサノバなのだ。
当時友達も少なくて、根暗な少年だった私にしてみれば、静かでささやくように歌うジョアン・
ジルベルトの曲と歌声がその当時の気持ちにぴったりとしていたのだと思う。

ライブで初めてスタン・ゲッツを聞いたのが20年前の横浜スタジアムでの「コンコード・ジャズ
フェスティバル」だったが、8月末の夕暮れに登場してきたスタン・ゲッツは、いきなり
「デサフィナード」を演奏した。「ゲッツ&ジルベルト」にも収録されているが、名曲の一つだ。
彼の独特の節回しは、まだ残暑がきつい夏の夕暮れにぴったりで、おもわず鳥肌が立ってしまった。

アントニオ・カルロス・ジョビンは、15年ほど前に彼と彼のファミリーが来日した際に、地元のライブ
イベントのメインゲストだった。これも夏の真っ盛りの時だったが、勇んでイベントを聞きに行った。
港の広い埠頭をライブ会場でのイベントは、優に一万人近くはいたと思うが、2時間近くの
ジョビンのピアノ、ボーカルの演奏は、楽しい和やかなものばかりでとても感動した。彼はそれから
しばらくしてから亡くなってしまったので、たった一度でも20世紀が生んだ名作曲家の演奏を目の前で
楽しむことが出来て本当に良かった。。。

「WAVE]
アントニオ・カルロス・ジョビンの名作。クラウス・オガーマンの編曲が実に素晴らしい。
このアルバムを初めて聴いたのは、小6の時だったが、このアルバムをリリースしたA&M
レーベルは、カーペンターズやバート・バカラックのアルバムで有名だが、ジャズ・ボサノバの
名アルバムを多数出している。
名プロデューサーのクリード・テーラーの手がけたアルバムに多数の名作がある。特に、ウェス・
モンゴメリー「アデイ・イン・ザ・ライフ」、ジョージ・ベンソン「ジアザー・サイド・オブ・アビーロード」、
ハービーマン「グローリー・オブ・ラブ」、デオダート「ツァラストラはかく語りき」、ジム・ホール「コンシェルト」
などが有名である。
このジョビンのタイトル曲の「WAVE」は、今やボサノバの代表曲だけではなくて、ジャズボーカルの
スタンダードとして、非常に頻繁に歌われている。英訳の詩が歌いやすいということもあって、
クレオ・レーンやサラ・ボーンなどのベテランジャズボーカリストがライブでよく歌っていた。
個人的には、アルバム3曲目の「Look To The Sky」と9曲目「Antigua」が気に入っていて、
ドライブ中に聴くに最高だ。。。。

「サンバ・アモール/ソニア・ローザ」
このアルバムは1979年の製作で、プロデュースとアレンジを大野雄二が担当している。
アルバム中にある「東京イン・ザ・ブルー」は、テレビドラマの主題曲だった。素晴らしく
メロディアスな曲で、ドラマの主題曲の中で出色の出来と言っていいだろう。
ソニア・ローザという歌手を知ったのも、このドラマの主題曲を通じてだった。
それ以来、六本木のジャズクラブ「サテン・ドール」で月1回位の割合でライブをやっていたので、
良く聴きに行ったものだ。
ギターの弾き語りで、優しくささやくように歌いあげるボサノバは、女性版ジョアン・ジルベルトと
言ってもいいだろう。
ある時、その当時流行っていた丸山圭子の「どうぞこのまま」を、彼女が自分流のボサノバに
アレンジして歌った時には、ざわついていたクラブの店内がしーんと静まり返って、皆が彼女の
歌声にじっと聞き入っていたのだった。
ちょっとした有名ポップス曲を上手にボサノバにアレンジして歌うのは、彼女の十八番と言って
良かっただろう。
もちろんボサノバの名曲もサンバも盛りだくさんだから、実に楽しいライブなのだ。
最後は、サンバで客が全員立ち上がって踊り狂うのはよくあって、とても楽しかった。
今は、彼女のライブを聞くことが出来ないのが本当に残念だ・・・・・。

「プラス・ブルー/村松 健」
かなり前のことだが、FM東京(今はTOKYO FMというらしいが)の日曜夜に大野祐二が
パーソナリティのジャズ番組があった。彼が気になるアーティストの曲を毎週取り上げて、
1時間で特集するというスタイルで結構気に入っていた番組だった。。。。

当然、ジャズアーティストが殆どだが、いわゆるフュージョン系のアーティストも良く出てきた。
「村松 健」というアーティストもこの時、初めて知ったのだった。今から15年近く前だと思う。
今や彼は、ヒーリング系の分野のアーティストとして有名になっているが、この時は、
最初のアルバムである「プラス・ブルー」を出したばかりでフュージョン系ミュージシャンと
分類されていた。大野祐二の番組でも、彼の音楽はフュージョンで紹介していたのを憶えている。
演奏のスタイルも、エレクトリックピアノ、アコースティックピアノ、ドラム、ベース、パーカッション
というバンド編成でサウンドを構成していて、いわゆるフュージョンバンドの編成と全く違いがなかった。
今の彼は、アコースティックピアノ一本で、それも単独で音作りをしているので、デビュー当時とは
全く違うのだ。どちらが良いというつもりはないが、確かに今のサウンドは、「癒し」になることは
間違いないだろう。

ただ、私の言いたいのは、そうゆうことではなくて、デビュー当時の彼のサウンドをラジオで初めて
聞いた時、日本人のフュージョンとして聞いたら、なんて素晴らしいセンスをしているのだ!
 と本当に驚いたのだ。
そして、次の日に、レコード屋(懐かしい言い方・・・)にすっ飛んでいって、彼の発売されたばかり
のアルバムを即買ったのだ。当事、私は中古レコード専門店か輸入レコード店のバーゲンセール
でしかレコードを買わない主義だったので、新品のレコードなんて買ったのは、すごい久しぶりだった。。。。

このアルバムは全部が全部ボサノバ色が強いわけではないが、どの曲も今までの日本人アーティストにない
洗練された都会的なサウンドが素晴らしいのだ。
個人的な意見だが、この後、ゴンチチが出てくるまでは、日本人のフュージョン系ヒーリングミュージックは
松岡直也と村松 健がトップだったと言ってもよいかもしれない。。。。

「レテ〜夏/クレモンティーヌ」
クレモンティーヌを初めて知ったのは、ハウス食品のCMで、夏の冷たいスープのCMだ。
レトルトのビシソワーズだったと思うが、その商品の紹介にこの曲が使われていたのだ。
ゴンチチのギターをバックに、夏のレイジーでアダルトな雰囲気が良く出ていて、一度聞いたら
誰の歌なのか気になって、CMが流されるたびに、注意して見ていたら、Clementine とクレジット
されていたので、CDショップに行って見たら、「東京の休日」というタイトルCDにこの曲が
入っていたのだ。

彼女はフランス人だが、ジャズとブラジル音楽に造詣が深く、彼女の才能に目をつけたゴンチチや
ピチカートファイブの小西康陽たちが中心になって、日本で制作したCDが「東京の休日」である。
したがって、フランスでは発売になっておらず、日本だけの限定盤なのだ。フランスでは、ジャズ系の
ものが主体であって、小粋なフレンチジャズというCDが数多く出されているが、これも悪くない。
最近は、ビッグバンドをバックに、一昔前のジャズスタンダードを歌ったアルバムが出たばかりだ。

「レテ」は、ゴンチチのギターが優しく流れて、彼女の囁くような声がゆっくりとかぶさっていく。
疲れている時に、この何とも言えない優しいメロディーが流れてくると、緊張した神経がすこしづつ
ほぐれていくのが、気持ちがいいのだ・・・自分にとって、最高の「癒し」系音楽になる。。。。

 


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